情シスの委託は可能? アウトソーシングのメリットと注意点を解説
企業の情報システム部門(情シス)が抱える課題は多岐にわたるため、情シス業務の委託を考える人がたくさんいます。
ただ、情シスは事業に大きな影響を与える上に、外部に流出してはいけない企業秘密も多く、情シスの管理や運営を外部に任せることに慎重になる人も多いです。
そこで今回は、情シスの委託について徹底的に解説します。
委託できる業務や委託のメリットをわかりやすく紹介するので、情シスの委託を考えている人は最後までご覧ください。
結論からいうと、情シスを委託するのは一般的なので、予算や評価方法を明確にした上で委託するのがおすすめです。
目次
情シスの委託が一般的になっている理由
情シスの委託が一般的になっている理由は、以下の通りです。
IT人材の確保が難しいから
どの業界でもIT分野の専門知識を持つ人材が不足しているため、多くの企業が外部の専門家に依頼しています。
例えば、新しいシステムの導入時にITエンジニアを採用するのは時間がかかりますが、委託する場合はすぐにシステムを導入できるでしょう。
専門知識を持ったITエンジニアは少なく、採用するのが難しいため、情シスの一部または全部を外部に委託する企業が増えています。
エンジニアの採用コストが高いから
ITエンジニアはどの業界でも需要が高いため、高待遇にしないと優秀なエンジニアを採用できません。
また、ITエンジニア自体が不足しているため、採用するためには相当な時間と労力が必要になります。
そのため、自社でITエンジニアを雇って情シスを運用するよりも、専門の会社に委託して定額で情シスを運用したほうが安価で済むケースが多いです。
社員教育が難しいから
ITエンジニアを雇って情シスを運用した場合も、専門のエンジニア以外にもシステムを理解して活用してもらう必要があります。
そのため、新しい技術やツールの導入時にはシステムの概要を理解してもらったり、操作方法を覚えてもらったりと、社員への教育が欠かせません。
社員の教育には時間と労力がかかり、結果が出るまでには長い時間が必要になるため、情シスの業務を全て委託する企業もあります。
委託できる情報システム業務
委託できる情報システム業務は、以下の通りです。
ヘルプデスク・サービスデスク
ヘルプデスクやサービスデスクは、委託先に依頼することで業務の効率化を期待できます。
例えば、ユーザーからの問い合わせ対応やトラブルシューティングは日々発生するため、対応が欠かせません。
しかし、これらの業務は専門的な知識を要求される内容も多く、社内で対応するには限界があります。
ヘルプデスクやサービスデスク、SNSでの情報発信や顧客満足度調査の業務を外部に委託することで、効率的に業務を進められるでしょう。
PC設定・データ管理
PCの設定やデータ管理は、ITの知識とスキルを持つスタッフでないと行えない業務です。
例えば、データのバックアップや復元、セキュリティ対策は、企業の重要な情報を守るために欠かせません。
しかし、これらの業務は専門的な知識を要求されるため、社内での対応は困難です。
そのため、PC設定やデータ管理の業務を外部に委託することで、安全かつ効率的に業務を進められます。
ネットワーク・サーバー構築
ネットワークやサーバーの構築は、企業の情報システムの基盤を作る重要な業務です。
業務をこなすには専門的な知識と技術が必要になる上に、業務の運営にも大きく影響するため、社内で対応するのは非常に難しいです。
そのため、ネットワークやサーバー構築の業務を外部に委託することで、安全かつ効率的な情報システムを構築できるようになるでしょう。
セキュリティ対策
情報漏洩やサイバー攻撃から企業を守るため、適切なセキュリティ対策を行うのは必須の業務です。
例えば、企業の情報資産を守るためには、ファイアウォールの設定やウイルス対策ソフトの導入などのセキュリティ対策を行う必要があります。
基本的なセキュリティ対策は社内でも行えますが、ミスを最小限に減らしたり、情報漏洩した時に対処したりするのは専門知識がないと行えないため、外部に委託している企業が多いです。
ネットワーク保守
ネットワーク保守は、企業活動をスムーズに進めるために必要です。
インターネットが繋がらなくなったり、社内のシステムが接続できなくなったりすると、日々の業務効率に大きく影響します。
日々安定したネットワーク環境を維持するためには、常時監視する環境と適切に判断する能力が必要になるため、外部に委託したほうがよい業務の1つです。
インシデント管理
インシデント管理は、予期せぬトラブルに迅速かつ適切に対応するために重要です。
例えば、システムダウンやデータ漏洩が発生した際には迅速な対応と適切な報告をして、情報漏洩の抑制と企業のイメージダウンを低減させる必要があります。
トラブル時に適切に対応するのは難しいため、インシデント管理を外部に委託するのもおすすめです。
DX推進に関するコンサルティング
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進は、企業の競争力を高めるために不可欠です。
DX推進には、クラウドサービスの導入やAI技術の活用など、新しい技術の導入や業務プロセスの改善が求められます。
高度なITのスキルやAIの知見が必要になる業務であるため、社内で優秀なエンジニアを獲得するのが難しく、外部に委託する企業が多くなっています。
優秀なITエンジニアは採用にかかる金銭的・時間的なコストが高いため、DX推進に関するコンサルティング業務は外部に委託して、社員は自社の業務に集中するのがおすすめです。
訪問・出張サポート
訪問・出張サポートは、現場でのネットワーク設定変更やパソコンの不具合対応などを行う業務です。
適切に対応するためにはITスキルや問題解決能力などが必要になり、社内で対応するのは難しいため、外部に委託する企業が増えています。
また、訪問・出張サポートは常時業務を行う必要がないため、必要な時に外部の企業に委託して出張訪問してもらうほうが低コストで済ませられます。
多くの企業では、新入社員の入社や異動が多い4月に繁忙期を迎えるため、そのタイミングで外部に委託することが多いです。
情報システムの業務を委託するメリット
情報システムの業務を委託するメリットは、以下の通りです。
情報システム担当者の負担を軽減できる
社内の情報システム担当者は多くの業務を担当していたり、担当者が1人しかいなくてリソースが少なかったりするため、円滑に業務が回っていない情シス部門が多いです。
例えば、日々のトラブル対応やシステムの保守管理は、情報システム担当者にとって重要な業務ですが、多くの時間とリソースを割くことで他の業務に対応する時間を奪ってしまいます。
そのため、情シス担当者の業務が多いと感じる場合は、一部の業務を委託して、他の重要な業務に集中するのがよいでしょう。
属人化を解消できる
情報システムの業務を委託することで、業務の属人化を解消できます。
例えば、特定のシステム管理者しか知らない設定やパスワードがあると、その人が休暇や退職した場合に業務が停止してしまいます。
特に、情シス業務を1人で回している場合は、担当者が退職した途端に業務が回らなくなるため、なるべく早く属人化を解消する必要があります。
そのため、情シスを外部に委託することで業務プロセスを標準化して、属人化を解消しておくのがおすすめです。
人件費・採用コストの削減につながる
情報システムの業務を外部に委託することで、人件費や採用コストを削減できます。
新しいスタッフを採用する場合には、採用活動にかかるコストや教育・トレーニングコストが必要です。
そのため、業務を委託することで金銭的・時間的なコストを大幅に削減し、他の重要な業務に集中するのがおすすめです。
情報システム業務の品質が向上する
情報システム業務を専門の外部企業に委託することで、業務の品質が向上する可能性があります。
例えば、セキュリティ対策やシステム構築において、専門的な知識を持つ外部企業に委託することで、社内で対応するよりも効率・質の工場が図れるでしょう。
社員教育の手間がなくなる
情報システムの業務を外部に委託することで、社員教育の手間を削減できます。
新しい技術やシステムを導入する際には、社員の教育が必要ですが、これには時間とコストがかかります。
新しいセキュリティソフトの導入時には社員に使い方を教える必要がありますが、これらの教育は時間がかかるうえに、業務を行うまでに時間がかかります。
社員教育の手間を省き、他の重要な業務にリソースを集中させられるようにするためにも、業務を外部に委託するのがおすすめです。
情報システムの業務を委託するデメリット
情報システムの業務を委託する場合は、以下のようなデメリットに注意しましょう。
ノウハウを蓄積しにくい
情報システムの業務を外部に委託することで、企業内でのノウハウ蓄積が困難になります。
例えば、システムのトラブルが発生した際に、社内で対応することでノウハウが蓄積されますが、業務を外部に委託することでトラブル対応の知見は得られません。
そのため、企業内でのノウハウ蓄積を重視する場合には、ノウハウが必要ない単純な業務だけを外部に委託し、他の業務は社内で対応することを検討しましょう。
情報漏洩のリスクがある
情報システムの業務を外部に委託すると、企業の重要なデータや顧客情報が情報漏洩してしまうリスクがあります。
情報漏洩をすると競合他社に製品を真似されたり、世間のイメージが悪くなったりと、甚大な被害を及ぼしてしまいます。
そのため、契約時に情報管理に関する取り決めを明確にしておくことが重要です。
委託企業を選定する際は、セキュリティ対策や情報漏洩時の対応などを確認して、できるだけデータを安全に利用してくれる企業を選ぶように気をつけましょう。
費用対効果の評価が難しい
情報システムの業務を委託すると、費用対効果の評価が難しくなる可能性があります。
システムの安定稼働やトラブルの早期解決は、具体的な金額で評価することができないため、委託費用と得られる効果を明確に比較することは困難です。
事前に明確な評価基準を設定して、定期的に業務の効果を検証することが重要になります。
情報システムの業務を委託する先の選び方
情報システムの業務を委託する際は、以下のポイントを押さえて委託先を決定しましょう。
セキュリティ対策されているか
情報システムの業務を委託する先を選ぶ際には、セキュリティ対策が十分にされていることを確認することが重要です。
例えば、委託先がISO 27001などの情報セキュリティ管理システムを導入しているか、定期的なセキュリティ監査を実施しているかを確認することが重要です。
セキュリティ対策は、データ漏洩やサイバー攻撃から企業を守る基盤となるため、委託先のセキュリティ対策は必ずチェックしておきましょう。
自社の制度や関連システムを考慮してくれるか
委託先が自社の制度や関連システムを適切に考慮してくれるかどうかも、重要な選定基準となります。
自社の制度や関連システムを考慮しないと、新たな追加業務が発生してしまうため、せっかく情シスを委託しても業務を最大限効率化できません。
そのため、委託する前に複数企業と面談して、自社に合ったサービスを考えてくれる企業に委託するようにしましょう。
委託先企業の教育体制が整っているか
委託先企業の教育体制が整っているかどうかも、重要な選定基準となります。
教育体制が整っている委託先は、質の高いサービスを提供してくれるため、委託先が定期的な研修や技術更新を行っているか、スタッフの資質を確保しているかを確認しておきましょう。
ナレッジ運用手法があるか
ナレッジ運用手法は、委託先が蓄積した知識や経験を効果的に活用し、業務の質と効率を向上させる方法です。
例えば、過去のトラブル解決の経験やノウハウをデータベース化し、新たなトラブル時に参照する方法を取り入れていると、スムーズに業務を進められます。
ナレッジ運用手法が確立されていない委託先では、同じトラブルが発生しても効率的に対処できない可能性があるため、ナレッジ運用手法の確認と評価を行って効率的な業務運用をしてくれる委託先を選びましょう。
円滑にコミュニケーションを取れるか
委託先を選ぶときは、円滑にコミュニケーションを取れる企業を選びましょう。
システム障害が発生した時に緊急で対応をしてくれるのか、深夜や休日でも対応してくれるのかなどを確認しておくことで、トラブルがあった時の対応の速さが変わってきます。
また、トラブルが発生した時に訪問して解決してもらいたい人は、近くに事業所があってすぐに駆けつけてくれる委託先を選ぶのがよいでしょう。
深夜や休日の対応の場合は追加費用がかかる場合も多いため、事前に確認しておくのがおすすめです。
導入実績が豊富か
安心して情シス業務を委託したい人は、導入実績が豊富な企業を委託先として選びましょう。
特に、自社と同じような事業領域・企業規模・委託業務内容の導入実績があると、スムーズに業務を行ってくれる可能性が高いです。
企業サイトに導入実績が記載されていますが、もし記載がない場合は、実際に問い合わせてみるのがおすすめです。
情報システム業務のおすすめの委託先・アウトソーシング会社
情報システム業務のおすすめの委託先・アウトソーシング会社は、以下の通りです。
情シス代行パック(エイネット株式会社)
情シス代行パックは、エイネット株式会社が提供する、情シス代行サービスです。
アカウント管理やヘルプデスクなどの情シス業務を、月額40,000円から委託できるため、安価に情シス業務を委託したい企業におすすめです。
また、他のサービスではなかなか実施していないPC端末の調達やWebでのリテラシー研修なども行ってくれるのも特徴です。
基本メニュー40,000円にプラスして、アウトソーシングしたい業務の追加料金を払うだけで自社に最適のプランにできるため、最小限のコストで委託したい人にぴったりのサービスといえるでしょう。
*参照元:情シス代行パック
対応できる主な業務 | ・PCの操作方法などの問合せ対応 ・アカウント管理 ・セキュリティ運用 ・オンライン定例会 ・IT資産の棚卸(1年に1回)など |
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ISO27001 | 取得済み・継続中 |
費用の目安 | ベーシック40,000円/月、スタンダード80,000円/月、プラチナ120,000円/月の3つのパックから、お好みのパックを選んで運用できます。 |
BPO(キューアンドエー株式会社)
BPOは、BPO事業で15年以上の実績があるキューアンドエー株式会社が提供している、社内ヘルプデスクBPOサービスです。
ヘルプデスク・システム運用・新システム検証などの情シス業務を委託できるため、社内の情シス業務を一括して委託したい企業におすすめです。
情シス委託ではノウハウが蓄積できないというデメリットがありますが、BPOではお問合せを一元化しCRM(Customer Relationship Management)を使用することで、詳細の可視化や課題の明確化を行えるため、自社でノウハウを定着させられます。
よくある質問はFAQに残したり、社内にノウハウを定着させたりして、お問合せ自体を減らすシステムを作ってくれるため、業務効率化を最優先に考えている人はぜひ利用してみてください。
対応できる主な業務 | ・ヘルプデスク ・システム運用 ・ネットワークセキュリティなど |
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費用の目安 | 不明(公式サイトでは目安金額の記載がありませんでした) |
*参照元:社内ヘルプデスクBPOサービス公式サイト
https://service.qac.jp/bpo_helpdesk
SAMURAI(クロス・ヘッド株式会社)
SAMURAIは、クロス・ヘッド株式会社が提供する、情シスコンサルティングによる業務代行・改善支援サービスです。
システム運用やアカウント管理、ヘルプデスクなどの情シス業務を委託できるため、多くの業務を依頼したい企業におすすめです。
また、24時間365日の運用センターを保持しているため、深夜休日問わず管理を行ってくれます。
対応できる主な業務 | ・システム運用 ・ヘルプデスク ・アカウント管理 ・セキュリティ管理など |
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費用の目安 | 情シスBPO:月額100,000円~(ITテクニカルサポートなど) |
*参照元:クロス・ヘッド公式サイト
https://www.crosshead.co.jp/service/onsite/plus_staff/
まとめ|予算や評価方法を検討してから委託しよう
この記事では、情シスの委託について解説しました。
情シスには委託できる業務がたくさんあるため、委託する業務・予算・評価方法を明確にして委託するのがおすすめです。
ただ、委託には情報漏洩やノウハウが蓄積できないというデメリットもあるため、慎重に委託先を選びましょう。
情シス業務の委託は、企業の効率化やコスト削減に繋がるので、単純業務が多い企業はぜひ委託を検討してみてください。