最近、起業家や研究者、クリエイター、一般企業のビジネスパーソンなどさまざまな立場の人が既存の働き方にとらわれずに仕事ができる場所、コワーキングスペースが注目を集めている。千葉県柏市の柏の葉スマートシティに誕生した国内最大級のコワーキングスペース「KOIL」もその1つだ。KOILでは、「世界を変えるイノベーション創出」の場にすべく、ファシリティを充実させている。400台が接続可能なWi-Fi環境がその1つ。同環境を構築すべく、ネットワーク設計からアクセスポイントの敷設までを担当したのがエイネットである。どのような機器を採用して、大容量で快適なWi-Fi環境を構築したのか、紹介しよう。
千葉県の北西部にある柏市。その一角の柏の葉では、三井不動産が千葉県や柏市などの行政機関、大学や研究機関、民間企業などと連携し、環境やエネルギー、食料や健康など、現代社会が抱えている課題を解決するような街づくりを行っている。それが柏の葉スマートシティだ。同シティが掲げているテーマは「環境共生都市」「新産業創造都市」「健康長寿都市」の3つ。その最適解を求めた開発が進められている。2014年4月、つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅に隣接する同シティの中核街区「ゲートスクエア」の一部が開業した。その一つの施設が、国内最大級のコワーキングスペース「KOIL」である。
「KOIL」内には目的に応じた様々な設備・空間が用意されている。
KOILが掲げるスローガンは「世界を変えるイノベーションの創出」。それだけに設備面もかなりの充実度だ。170席のコワーキングスペースをはじめ、大小さまざまなミーティングスペース、個室になったイノベーションオフィス、大規模なカンファレンスも開催できるKOILスタジオ、3Dプリンターが設置されており、アイデアを即形にできるプロトタイピングスペースKOILファクトリー、カフェなどがある。これらすべてのスペースでは、誰もが自由にインターネットにアクセスできるよう、Wi-Fi環境、有線LANが敷設されている。しかも「Wi-Fi環境は400台まで同時接続が可能」という。このような大規模なWi-Fi環境を構築したのが、エイネットである。
KOIL内は快適なWi-Fi(無線LAN環境)が整備され、誰でも自由に使うことができる。
Wi-Fi環境のアクセスポイントに採用したのはAirMac Express。同アクセスポイントは個人向けで電波干渉など細かい調整ができないため、一般的なオフィスの無線LANアクセスポイントに使われることはほとんどない。しかしこれを選択したのには理由がある。第1にiPhoneやiPad、MacBookなど、コワーキングスペースに集まる人は意外にAppleユーザーが多いこと。利用者に合わせた機器を選択したのである。第2に同施設の管理・運用を任されているロフトワークがMACユーザーだったこと。つまり管理する側も普段使っている機器で容易にアクセスポイントの設定などを管理できることが優先されたからである。 先述したように、KOILは広大なエリアを有している。それをカバーするため、AirMac Expressを12基設置。当初、接続環境はWi-Fi環境のみの予定だったが、バックアップ的な意味合いも兼ねて有線LANも67口用意している。
KOILの受付奥にも設置されたアクセスポイント例。
主なアクセスポイントは天井の各所に設置されている。(赤丸箇所)
会議スペースにも有線LANを用意。有線LANは合計67口にのぼる。
床面各所にも有線LANと電源を用意。
エイネットが担当したのは、LAN環境の構築だけではない。400台接続が可能なネットワーク構成設計も行っている。バックボーンに採用したのがUSENの1Gbps占有型光ファイバ光ビジネスアクセスNEXT。そして万一のバックアップ用にNTTのBフレッツを採用したフレッツ・アクセスを敷設するなど、冗長性を考慮した構成となっている。
「KOIL」のWi-Fi(無線LAN環境)ネットワーク構成
Wi-Fiネットワークを集約するスイッチとファイアウォールが収容されたラック。
設計から導入に至るまでかかった期間は延べ1カ月半。最も苦労したのは現地でのアクセスポイントの敷設作業だった。写真を見ればわかると思うが、KOILの空間デザインは非常に斬新。通常、天井裏に設置するのだが、KOILでは天井がなく、配管がむき出しになっている箇所もある。そんな場所でもアクセスポイントがうまく固定できるよう、工夫が求められたからだ。天井のないところではワイヤーラックの上に設置し、固定しているという。 2014年4月14日、KOILは開業。近くには東京大学の産学連携拠点「東大フューチャーセンター」もあり、今ではさまざまな人がイノベーション創造の場として集うだけではなく、セミナーやカンファレンスが開かれたりしているという。ここからどんな「世界を変えるイノベーション」が生まれてくるのか、期待はつきない。